セ・ラ・ヴィ

ベランダにセミが落ちていた。おお。今ごろみんな浮かれ気分で夏フェスだったりするのに(やっかみ)、夏のまっさかりのうだる朝に、洗濯物がひらめくアパートのベランダで短い一生を終える。人間の一生を仮に70年として(わたくしは100まで生きる気満々だけれども計算がめんどいので)1日が10年分だ。のんびりしてるヒマはない。精一杯鳴いたかい?恋をしたかい?そしてまためぐり来る季節に新しい命を託したかい?悔いのない一生をおくったかい?
というような余計なお世話をやきながら土に返してあげようと思って手に取ったらばいきなりギチギチギチと羽を鳴らしたので、慌てふためいたわたくしはそのままベランダの外に投げるという暴挙に出てしまった。あららー。セミは放物線を描いて用水路にポチャリと落ち、そのままゆっくりと流れていった。