夢の診断はどう出る

ソファーに寝転んでウトウトしてたらふと人の気配がした。こちらに背中を向けてアームに腰をかけ、キャンバスに向って絵を書いている。誰かは分からないが女性だ。キャンバスは青や緑のマジックで塗られていて、深い海の底にいるような、暗い色調なのに暖かな、不思議な絵だった。マジックでこんな風に描けるんだとしばし見とれていたら、彼女は太い刷毛を取り出してその毛先で黒い絵の具をキャンバスに散らした。黒い点が絵の上に飛び散ってそれはまるで欲望や喜びや悲しみや自由や希望や嘆きやそういう誰にも見せたくない何かを惜しげなくばらまいたかのようだった。
 
欲しいその絵が欲しい。
でも本当に欲しいのは絵じゃなかった。
 
欲しいその才能が欲しい。
 
アタシは彼女に激しく嫉妬していた。ギリギリと焼けるような嫉妬を押し殺してアタシは泣いていた。泣きながら目が覚めた。
  
夢だ。
泣きながら目を閉じた。
 
気づくとチャオプラヤー川に浮かぶ水上の船の家にいた。さっき絵を書いていた女性の後について茶色く濁って汚い川を泳ぐ。これからどこにいくんだろう。そのうち川の支流に入りどんどん狭く浅くなってきた。雑多に入り組んだバラックの間に流れる支流を膝までつかって歩きながら彼女に追いつこうとするが、水に足を取られて全然追いつけない。どこに行くのか聞きたくても声がでなかった。
  
電話が鳴っていた。電話はどこだ。
伸ばした自分の手。
目が覚めたら携帯が鳴っていた。
  
これも夢だ。
 
 
 
真昼の夢。冬の日が奥まで差し込む部屋で昼寝するのは幸せなものだけど、なんだか妙な夢を2本立てで見てしまった。
 
絵なんてもともと描けないでしょ自分、とか何故にチャオプラヤー川、とかツッコミどころが満載。ヘンにリアルで生々しい夢だったなあ。マジックのツンと鼻につくケミカルな匂いとか。
チャオプラヤー川の淀んだくっさい匂いとか。アタシの足の甲に少し飛んだ絵の具が冷たかったとか。何だったんだろう一体。彼女は一体誰だったんだろう。
 
それにしたって夢の中でまで人様の才能を欲しがって嫉妬して泣くなんて、どんだけ浅ましい人間なんだアタシは。笑っちゃう。笑うしかない。
 
 
昨日今日とドロのように眠くてどうしようもない。まあ生理中はたいていそうなんだけど。それはホッとすると共に何故だか残念な、アタシは残念じゃないけど残念な顔をする人たちの顔が浮かぶ瞬間。なんのこっちゃ。
  
昨日ようやく喪中ハガキを出した。去年の年賀状を見ながら、じーちゃんも99歳だったし楽しげなコメント書いてもオッケーな感じ、とアレコレ書いたのだが、それがどうもこの不安定の原因な気がする。わかんないけど。
  
学生の頃に比べて年末に貰う喪中ハガキが増えている。
学生時代の結婚した友達のたいていが親になっている。
結婚してない友達のたいていが自分の道を極めている。
ぐるぐるぐるぐる。腹の音ではない。いやそうかも。
帰省から戻ってくるたびにいつもぐるぐるぐるぐるしてる。
支離滅裂だ。
 
ああ眠い。ダメだ眠い。
水あめの中に落ちていく感じ。
水あめの中に落ちた事ないけど。