オペラ座の怪人を見た

10年ぐらい前にブロードウェーで見た。頭上をシャンデリアがかすめていくあの大袈裟でお金をかけた舞台。当時すでに何年ものロングランでマンネリ感というか惰性感は否めなかったけども―――役者は素晴らしかった。はじまる前のオケの音あわせ、役者の息遣い、舞台からあふれ出る躍動感、会話が音楽に乗るあの瞬間!(もうええちゅうねん)。ミュージカルラバーというにはおこがましいけど、好きだから、映画化となるとどうしても不安がよぎる。
  
不安的中。廃墟と化したオペラ座がブワァァッと輝かしい時代に戻るシーンのCGは確かに映画ならでは。タイタニックかよという突っ込みはおいといて鳥肌モノでした。だけども。主役の二人に華がない!おばちゃん怒るよ。

クリスティーヌ。下手ではないけどあのかぼそくて貧弱な声。プリマドンナはホールの天井をビリビリいわして客を感電死させるぐらいじゃないといかんです。顔もケロンパにしか見えないし。そしてファントム。あの歌い方ポップ歌手ならいいと思う。でもあれはミュージカルですから。オペラをモチーフにしたミュージカルの映画化ですから。声にハリがない。包容力がない。魂抜かれるような艶がない。ウキー。よっぽど子爵の人の声の方が素敵。そうそう、カルロッタは最高でした。ああいう役をやらせたらミニー・ドライバーは最高。自分に向いてる役どころをにようやく気付いてくれたってかんじ。あの声も、だれがあててるかは存じ上げないけども、あれをクリスティーヌにあててあげたらよかったのに。
 
もともとは、一人の女が二人の男の間を揺れ動くだけの話といっちゃ実も蓋も無いけどただのメロドラマなわけで、そのメロドラマにあの不穏な舞台背景と音楽と歌とオケがからまってミュージカルになることによって名作たりえてるわけで、映画化しちゃうとただのメロドラマに逆戻りだと思うの。「嗚呼バカ!お前女ならそこはファントムを選ぶでしょ!」ってなるはずの男の哀愁もイマイチ。映画化するならもっと斬新な方法で、原作に乗っ取りつつも違う手法で見せてくれなきゃ。